先日、植物と魚を一緒に育てる農法「アクアポニックス」の社会的意義についてのおうち菜園主催のディスカッッションの様子をご紹介しました。
そんなアクアポニックスが食糧生産としてのシステム導入だけではなく、現地の人々が食べものを”自分で育てる”仕組み作りとして活用されています。場所は、インド洋の島国、マダガスカル。
3割が1日50セントで暮らす国
サイクロンや干ばつ、砂漠バッタの大襲来などによる農業被害に今でも苦しめられている国、マダガスカル。ここでは小規模な自給農家が多い中で人口は急増しているため、食糧が不足しています。
貧困と食糧不足は人口の多い都市部では特に深刻だそうで、約3割の人が1日あたり50セント未満で生活。食糧を買うためにはこの半分の25セント以上が必要です。
海では乱獲による漁獲量の低下が見られ、獲れるものの多くがヨーロッパ等に輸出されるため、貧困層の食卓に魚が届くことも稀。実際、栄養失調率も高いようです。(参考リンク)
また、カロリーが足りていてもビタミンやミネラルが欠損してしまう「見えない飢餓(Hidden Hunger)」問題もあり、免疫力の低下や寿命の低減を引き起こしています。
「TAG」が届ける”食糧の育て方”
こうした状況のマダガスカルに“食糧を届ける”だけではなく、“食糧の育て方”を届けようとしている人たちがいます。アメリカのNPO団体「TAG」(Targeted Aquaponic Growth)です。
「TAG」では、野菜と魚を一緒に育てられるアクアポニックスに注目して、現地にシステムを導入することはもちろん、トレーニングも実施し、国民が自分で育てられるような環境作りを支援しています。
「TAG」で地域のリーダーたちにトレーニングをしているケン・ワインバーク氏は、そのメリットを次のように話しています。
「アクアポニックスは、バランスのとれた食事のためにとてもいい方法です。オーガニックな野菜や魚などの健康な食事が、病気と闘う健康な身体づくりにつながります。」
95%の節水、かつ早く収穫できる
「TAG」がアクアポニックスを選んだ理由は、その省エネ性。例えば水の消費量は一般的な農法よりも95%少なく済み、スピード生産(一般の半分の期間で発芽して2〜3倍の量を生産)も可能です。
これによって、干ばつのある地域でも食糧生産が可能になり、自然災害のリスクに長期間さらされにくくなります。マダガスカルのような自然災害が多く、食糧不足に陥っている環境でも、食べものを自分たちで育てる仕組みが作りやすいのです。
新鮮で栄養のある食べものを
「食べものがないのならば、自分たちで育てよう!」という「TAG」の挑戦は、とても社会的意義があるように感じました。飢餓の地域ではカロリーも重要ですが、新鮮でおいしい野菜や魚を食べれるようになるのは大きな変化だと思います。
みなさんは、他にはどんな場所でアクアポニックスが活躍していると思いますか?また別の事例をご紹介していきますので、お楽しみに。
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— おうち菜園
Profile
- 「世界の菜園」「アクアポニックス」担当。好きな野菜は、ブロッコリー。