私たちの髪や爪、筋肉をつくってくれている栄養素、たんぱく質。人間にとって不可欠なもので、”3大栄養素”のひとつとしても知られています。この摂取を怠ると、髪が痛んだり、肌荒れしたり、免疫力が低下したり、さらには集中力が衰えるなど、様々な症状を引き起こします。
あ、どうも、おうち菜園の江里です。今回紹介するのは、そんな大切な栄養素である”たんぱく質”を、自宅で簡単に生産できてしまう装置。ビックリしないでくださいね。なんと、育てるのはハエの幼虫。高タンパクな幼虫を繁殖して、そこから摂取しよう!という栽培キットなのです。
スタイリッシュな幼虫栽培キット
この未来的で、インテリア性をもった装置「FARM 432」をデザインしたのは、オーストリア在住の工業デザイナー、Katharina Unger(以下、カタリーナさん)。この栽培キットを使えば、たった1グラムの卵が、18日間(432時間後)で2.4キロの幼虫(たんぱく質)に。
装置の説明動画。アニメ調でオシャレなのが印象的です。
収穫まで虫にノータッチ
「FARM 432」の仕組みで感心するのは、収穫まで一切虫を触る必要がないところ。卵の孵化から育成までのプロセスを、直接虫に触れずに行うことができます。これなら、虫が苦手な人でも大丈夫かも。
人々が家庭で昆虫を栽培する唯一の条件は、それを一切触る必要がないということだと私は知っていました。ーーカトリーナさん(WIREDより)
栽培するのは、「ブラックソルジャー」と呼ばれるハエの一種。1回に500~1200個の卵を産み、4日ほどでそれが孵化。14日後が収穫のタイミングです。幼虫は有機物であればなんでも食べるので、生ゴミなどを与えればOK。
私たちは年間500gの虫を食べている
カタリーナさんによると、実は私たちは普段の食事から年間500グラム程度の昆虫を間接的に摂取しているそう。市販のチョコレートからマーケットで売られている果物まで、食品になんらかの昆虫の破片が含まれていることは珍しくなく、生産の過程で完全に駆除することは不可能だとか。
例えば、2012年にスターバックスが菜食主義者に応える形で、無添加のストロベリー・フラペチーノの染料として、カイガラムシから抽出した色素を使っている、という事例がありました。(参照)
「昆虫を食べている」というと、少し胃袋の居心地が悪くなりますが、よくよく考えれば自然なこと。それが加工されているのか、それとも丸ごとなのかの違いです。逆に大量の農薬で駆除して生産すると、身体にとって悪い食品ができてしまうのです。(農薬自体の良い悪いではなく、量の問題を指しています)
実際、昆虫の生産の効率性や栄養価を考えてみると、既存の食料(牛、豚、鶏)に比べてはるかにメリットが多いことに気づきます。例えば、10キロの飼料で生産できる牛肉の量は1キロ、豚肉は3キロ、鳥肉は5キロ、昆虫だとなんと9キロ。効率性は牛肉の9倍です。
“昆虫食を身近にする”という部分では、以前紹介した、シンプルでおいしい昆虫料理を提供する「Ento」や、他にもコオロギのプロテインバーを開発中の「exo」など、海外でじわじわ活動が広がってきています。
でも、「FARM 432」が実現したいのは、それを自分たちの家で”栽培する”ということ。ちょっと過激な気もしますが、世界人口の増加による食料生産の限界が懸念されているなか、10年、20年、50年後の未来を考えると、昆虫を当たり前に食べ、栽培する時代がやってくるのかもしれません。
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