どうも、風呂上がりにちゃんとストレッチしてます、おうち菜園の江里です。
突然ですが、みなさんには「これになら人生を捧げてもいい」と思えるものはありますか?その対象は、仕事や家族、趣味であったりするかもしれません。
この質問に、胸を張って「ミツバチです」と答える男性がいます。そう答えるのは、「おうち菜園な人」4人目、千葉県君津市で養蜂家として活動している齊藤雄紀さん。
齊藤さんがユニークなのは、異業種からの転身ではなく大学時代からずっと養蜂に関わってきている点。25歳の若さですでに養蜂をはじめて7年目を迎え、平均年齢が60歳を超えている養蜂業界では異例の人材であることがわかります。
今回は、実際に現地で養蜂作業も見学させていただきながら、「蜂のためならなんでもします」とまで語る齊藤さんの想いをうかがいました。25歳の”ミツバチへの想い”を、皆さんも持っている(はずの)”○○への想い”と照らし合わせながら、ぜひ読んでみてください。
「ミツバチ研究会」との出会い
江里 今日はお忙しいなかありがとうございます。
齊藤雄紀さん(以下、齊藤) いえいえ、こちらこそわざわざ遠くからありがとうございます。
江里 齊藤さんは1988年生まれですよね。ぼくは87年なので年が近いのですが、すでに養蜂歴7年というのがすごい。一体どんなきっかけで始められたんですか?
齊藤 大学時代に出会った「ミツバチ研究会」がきっかけです。
江里 大学に養蜂サークルなんて面白いですね!世間的には「攻撃的でこわい」というイメージがミツバチにはありますが、当時はそんな感情はなかったのでしょうか?
齊藤 確かに少しはありました。ただ当時は「面白そうな活動」という感情の方が強くて。それで参加しました。
江里 そこから齊藤さんの養蜂キャリアが始まるんですね。
齊藤 はい。もう授業そっちのけでやっていることも多かったくらいです。
江里 確か出身学部は「応用生物学部」でしたよね。これも何か繋がりがあるんでしょうか?
齊藤 化学の側面が強かったので、直接的な繋がりはなかったです。ただ、昔から生き物が大好きでした。
江里 大学卒業後は、どうされたんですか?
齊藤 たまたま求人があった養蜂の会社に受かり、1年程働いていました。
江里 なるほど。大学卒業後も仕事として養蜂に関わっておられたんですね。
齊藤 はい、ここで1年ほど働いて経験を積み、養蜂家として独立しました。
江里 ちなみに、ミツバチとの出会いは大学時代だと話されていましたが、「養蜂家として生きていく!」と決意するきっかけとなった場面を具体的に覚えていたりしますか?
齊藤 大学時代にミツバチがどんどん増えていく様子を見ていたときですね。当時はサークルで日本ミツバチも飼っていて、それが2群、3群と元気に増えていき、「この子たちと一緒にやっていきたい」と強く感じるようになりました。
日本ミツバチと西洋ミツバチ
日本の野山に昔から生息しているのが日本ミツバチ、元々ヨーロッパやアフリカに生息していたのが西洋ミツバチ。小柄な日本ミツバチは病気には強いですが、現在はより管理しやすく多くの蜜を集める西洋ミツバチでの養蜂が主流となっています。
現在は30群、将来的には50群に
江里 君津市に移り住んでもうどれくらいですか?
齊藤 2年半です。たまたま倉庫付きの貸家を見つけたのと、ここは藤の木や椎の木などの蜜源が豊富なのもあって引っ越しました。ただ今年はハズレなのか、あまり花が咲いていなくてハチミツが採れていないですね。
江里 現在はどれくらいの数のミツバチを飼育されているんですか?
齊藤 全部で3ヶ所ある養蜂場をあわせると30群ですね。これをまずは40群、将来的には50群にまで増やしたいです。
養蜂の単位:群と枚
ひとつの巣箱には板(これを”巣脾枠”と呼びます)が約10枚収納可能で、1枚につく蜂の数は約2000匹。つまり10枚箱ひとつが蜂でいっぱいになると約2万匹となります。養蜂家は蜂が増えるにつれて巣箱を2段3段と重ねていき、最大で3段6万匹のグループをつくります。このグループひとつを”群”と呼びます。群は蜂の数にかかわらず女王1匹に率いられてるグループのことです。
江里 ちなみに、ひとりだとどれくらいの数(群)を飼育できるものなんでしょうか?
齊藤 採蜜を目的とした場合は、50群が限界だと思います。これ以上になるとテキパキ作業をしなくてはいけなくなり、その結果として扱いが雑になり蜂の気性が荒くなってしまいます。
江里 なるほど。確かに齊藤さんの蜂はびっくりするくらいに大人しい。巣箱に近づいても刺されることがないくらい。通常の養蜂作業では安全面で手袋をはめる場合が多いですが、齊藤さんは素手で行っていますよね。
齊藤 そうですね、基本的には素手で行っています。蜂を驚かせないように、ゆっくり作業するようにしています。
山の蜜源をもっと増やしていきたい
江里 さきほど「今年はあまりハチミツが採れていない」と話されていましたが、それはやはり周囲の自然の影響ですか?
齊藤 はい、特に藤の木の調子が悪いです。年初の雪の影響もあったのか、木が垂れ下がってしまって元気がなく、花も咲いていないですね。
江里 周囲の自然の状態が、ダイレクトに養蜂に影響するんですね。
齊藤 山を見ればわかります。杉ばかりではなく、ここにもっと蜜源が増えればいいのにと思います。最近では、自宅の庭にユリの木を植えています。蜜が採れるのは10年後ですが、ミツバチたちが生きていけるような環境が広がって欲しいです。
ぼくは、ミツバチの内蔵
江里 齊藤さんにとってミツバチとはどのような存在なのでしょうか?
齊藤 ぼくはよく、「自分はミツバチの内蔵だ」と言い聞かせるようにしているんです。
江里 というのは?
齊藤 ぼくが飼っている西洋ミツバチは、人間のサポートなくして生きてはいけません。飼育者とミツバチが気持ちで通じ合い一体となることで、初めて養蜂は成立する。僕はそう思っています。
江里 なるほど。そういう意味での「ミツバチの内蔵」なのですね。
齊藤 蜂はぼくの一部。そんな意識を持って毎日作業しています。
江里 だから「蜂のコンシェルジュ」なのですね。
齊藤 そうです。蜂に関する”こと”だけではなく、蜂の”ため”ならなんでもする。そうした想いがあって「ビーコンシェルジュ」という事業名にしました。ハチミツも好きですが、それ以上にミツバチ自体が好きなんです。
江里 これからはどのように活動していく予定ですか?
齊藤 まずは会社の経営が成り立つようにしないといけないですね。現在は、知り合いの養蜂業者にハチミツを卸したり、あとは直売所とウェブサイト上で販売をしています。今年はハチミツの収穫量が少ないので、もっと蜜源が多い場所への移動も考えているところです。
江里 今日は色々と教えていただき、ありがとうございました。おうち菜園としても、これから養蜂をやる予定なのでとても勉強になりました。またお邪魔させてください。
齊藤 いえいえ、こちらこそありがとうございました。
インタビューを終えて
齊藤さんがすごいのは、大学時代に「これだ!」と感じたものに向かって6年間ずっと走ってきたこと。「ミツバチ研究会」との出会いから全く軸がぶれていないことに、その熱意の深さを感じました。
おうち菜園ではまさにこれから養蜂を実践していく予定なので、そのノウハウを惜しみなく教えてくれる齊藤さんの姿勢も素晴らしかった。事業としての収益性も大事ですが、それ以上にミツバチへの想いがあふれていました。
皆さんは、齊藤さんの熱意から何か感じ取れるものはありましたか?5分でも10分でも、「自分が本当に好きなものはなんだろう?」という問いをぶつける時間をつくってみると、それからの日々がより濃いものになるかもしれません。
齊藤さんのウェブサイト▼
Bee Concierge
(インタビュー日:2014年5月12日)
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Profile
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