寒波でミツバチが心配、蜂飼いの飯倉です。
街はすっかりクリスマス気分ですが、裏で頑張っているのがミツバチ。彼らがいるからこそ私達は、この冬の時期にいちごを味わうことができます。
冬のいちごはミツバチのおかげ
クリスマスケーキの需要から、12〜1月にかけて出荷の最盛期を迎える「いちご」。そんな冬のイメージがあるいちごですが、本来の旬は5〜6月の初夏です。
真冬に流通できるのはハウス栽培の技術と、ポリネーション(花粉交配)に勤しむミツバチ達の活躍があってのこと。彼らは管理と効率の面からも最適な「ポリネーター」(花粉媒介者)です。
ハウス栽培のポリネーション
ただ、ハウス栽培は保温効果に優れてはいるものの、外界と遮断されているのでポリネーターが入れません。また人が受粉させたのでは効率が悪いだけでなく、綺麗な形のいちごに揃わないそうです。
そこで巣箱をハウス内に置くことで、ミツバチが確実に果物や野菜を実らせてくれるようになり、さらには収穫量も向上させてくれます。
いちご農家は自分で養蜂される方もいらっしゃいますが、ハウス用に養蜂家からミツバチを買うか、貸出してもらって受粉に使う場合が多いです。
いちごの他にも
またいちごに限らず、スイカ、メロン、ナス、サクランボ、ブルーベリー、ナシ、リンゴなど、ミツバチのポリネーション対象は多岐にわたります。人類の食糧の3分の1は、ミツバチの受粉の賜物とも。ミツバチは私達の食生活になくてはならない存在なのです。
環境悪化で益々高まるミツバチの価値
現在、自然環境の悪化からかポリネーター(他には昆虫や一部の鳥など)は減少していて、ミツバチの重要性はさらに増しています。
国内では約21万群(1群=2〜4万匹)のミツバチが飼育されていますが、この半分以上となる約11万群のミツバチがポリネーション用に使われています。ハチミツの採取は行わずに、ポリネーション用ミツバチ専門の養蜂家もいるほどです。
出典:「養蜂をめぐる情勢」 農林水産省生産局畜産部 H26.9
貸出されたミツバチは養蜂家が管理しますが、売り切りのミツバチは農業資材として消費されます。
ハウスの中は高温や農薬の影響もあってミツバチには過酷な環境です。受粉の役を終えても、かわいそうですが伝染病予防の意味もあって焼却処分される運命なのです。
ミツバチを思いやる農業を
下記は、大先輩の養蜂家の言葉。
「農家にゴミとして積まれた巣箱を見ると悲しくなる」
ミツバチが農業になくてはならない存在だとしても、道具として消費するのは養蜂家としては複雑な心境です。
「ミツバチのために殺虫剤は使わない」という農家もいらっしゃるようなので、その取り組みが広がると素晴らしいと思います。
いちごを味わう時、そんなミツバチ達のことを少しでも思い出してもらえたら幸いです。
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— おうち菜園
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