ハーブ今昔ものがたり「ネアンデルタール人の花束」

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読者の皆様、はじめまして。アロマ専門店&スクール「グリーンスリーヴス」主宰の阪口智子と申します。

ネアンデルタール人の花束

世界中の宗教儀式には、現在でも香(こう)が供えられます。神や仏に遣える人たちは体を香で浄め、場を清めます。清浄な心身になるために香りを利用してきました。

多種多様な宗教の形態がありますが、死者を悼む気持ちを花や香に託すことは、実は最初は6万年前のネアンデルタール人の遺跡から物語がはじまっていた。今回はそんなお話をしようと思います。

香の供えは、6万年前から始まった

ハーブの歴史を記録からさかのぼれるのは3500年くらい前からですが、6万年前のネアンデルタール人の古代遺跡からは人骨とともに大量の花粉が発見されています。その痕跡から、彼らが死者を埋葬する時に遺体を花や草で包んでいたことがわかりました。

体の上部に花粉が集中していることから花束のようにして植物を置いたのではと推測されています。花粉の分析結果から植物はヤロウ、ヤグルマギク、アザミ、マロウブルーなど8種類全てがハーブ。そのうち7種類は現在でも医薬などで使われているものです。

ヤロウの花 - Photo credit: Nayu Kim via Flickr

ヤロウの花 – Photo credit: Nayu Kim via Flickr

ハーブばかりが供えられていたということは、6万年前の人はすでに「心身を癒やす薬草」としてハーブの特性を知っていたのかもしれません。香りのよい薬草で体を包み、あの世で苦しまないようにと祈りをこめ花を手向けたのでしょうか。

古代人の想い

いったい古代人は、どのような思いで花を摘み、花を手向けたのでしょう。想像力は掻き立てられ、私の魂は遥か彼方へ飛んでいきます。

現在よりももっと過酷な環境を生き抜くためには集団で助け合う必要があり、強い結びつきが必要だったはず。その大切な仲間の死は大きな喪失感をもたらしたことでしょう。

Photo credit: Andrés Nieto Porras via Flickr

Photo credit: Andrés Nieto Porras via Flickr

でも、今も昔も死者を悼む気持ちは同じはず。歓びも哀しみも、現代の私たちの心と何も変わらないのではないでしょうか。

自分たちを上回る存在

古代人たちは、日々の食べ物の確保、外敵からの防御、自然の太陽や雨の恵み、病気の治癒にいたるまで、自分たちを遥かに上回る大きな存在に救いを求めていました。

4万6千年前の遺跡からは、香りの良い木を集めて焚いた儀式の跡が発見。人類が火を発見し、ありとあらゆるものを燃やしていく中で、偶然うっとりするような甘い香りの草木をみつけていったのでしょう。

Photo credit: Scott Wylie via Flickr

Photo credit: Scott Wylie via Flickr

それは自然そのものだったかもしれませんが、現在人よりはるかに古代の人々は、”目に見えなくても存在するもの”として神(大いなる存在)を信じることにより日々の糧を得ていたのです。

天と地をつなぐ「香」

大自然の中で五感全てに染み入るような体験を重ねていくうちに、空に消えていく香煙を見ながら何らかの特別な感情が湧きでたとしても不思議ではありません。芳しい香りは煙となって天と地をつなぐ特別な存在へとなっていきました。

人の心を陶酔させるような香りは神も喜ぶに違いない、煙となって天へ吸い込まれていくことで私たちの願いや祈りも届けられるだろうと。古代、生と死、人と神との通路が天へ昇る煙(香り)だったのではないでしょうか。

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自然から生まれた命を、もとの清らかなものにして自然に還すこと。そして自然の中で命が循環されていくのです。時を超えてハーブから大切なことを教えられたような気がします。

Profile

阪口 智子
阪口 智子アロマ専門店&スクール「グリーンスリーヴス」主宰
ナード・アロマテラピー協会認定アロマ・トレーナー、ICAAアロマセラピスト・インストラクター、ハーブ、薬膳コーディネーター。好きなハーブは、ミント。 公式サイト

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